入浴介助のやり方と介護浴槽・高齢者介護で知っておくべきポイント

少子高齢化が進行する日本において、介護は社会全体の課題です。この記事では、その介護の中から、介護浴槽を使った入浴介助のやり方についてご紹介しています。また、高齢者介護において知っておくべきポイントについてもあわせてご紹介していきます。

入浴介助のやり方と介護浴槽

入浴介助は、介護をする場合、欠かせないものです。お風呂に入り、体の清潔を保つことは、人間にとって心身の健康につながる大切なことです。しかし、高齢の方や体に障害をお持ちの方の中には、介助無しではお風呂に入れない方もいらっしゃいます。お風呂に入れず、体を清潔な状態に保てずにいると、皮膚病などを引き起こす可能性があるので、こうした方も介助してもらいながら、定期的に入浴する必要があるのです。

入浴介助の準備

高齢者の入浴介助を始めるにあたり、大切なことは何でしょうか?やさしく、心のこもった介護でしょうか?もちろん、機械的ではない、心の温もりのあるケアをする必要はありますが、入浴介助でまず大切なのは「準備」です。準備が整わずして、心の温もりがあふれるケアを提供することはできません。

まず、介助を行う者は、エプロン、手袋、滑り止め付きの靴を身につけます。どれも開業のものが販売されているので、それらを選べば問題ないでしょう。入浴介助を行う場所は、滑りやすく、また、自身が水やお湯を被ってしまうことも多いので、ぬれてしまっても問題なく介助が行えるよう、服装を整えましょう。

また、実際の入浴タイムに使うのは以下のようなグッズです。

・シャワーチェア

・ボディスポンジ

・吸水性に優れたタオル

・おむつ

・尿取りパッド

・転倒防止用マット

これらは忘れずに準備しておきましょう。高齢者を一人にすることは避けなければならないので、入浴介助を行う際は、事前のチェックをお忘れなく。

入浴介助を行う際の心構え

実際の作業に入る前に、介助者としての心構えを確認しておきましょう。

・安全第一

介護浴槽を使った入浴介護、また自宅での介助、どちらの場合も当たり前のことですが、「安全第一」が原則です。自宅で介助を行う場合は、設備などにも制限があるので、施設のように余裕を持って作業を行うことが難しくなります。介助者が一人では足りないようなら二人で、さらにそれでも人手が足りないようならデイサービスを利用するなど、安全第一で高齢者の入浴ケアを行うことが大切です。

・体の状態をチェック

入浴介助は、高齢者の全身の状態をチェックするのによい機会です。入浴介助の際は、かぶれやキズなど、皮膚の状態を必ずチェックしましょう。高齢者の場合、ベッドに横になる時間や、座りっぱなしになることも多く、床ずれができやすくなります。病気などが原因で皮膚に異常が出ることもありますので、いつもと違う点がないか注意しましょう。

・体調不良時は無理せず

お風呂に入ることは、健康維持のためにとても大切なことですが、体調不良のときにまで無理することはありません。入浴により体調がさらに悪くなってしまっては元も子もありませんので、中止の選択肢があることも忘れないでください。高齢者の体調が良くないときは、足湯や、気になる部位だけ温かいぬれタオルで拭くなどの方法で対処しましょう。

介護浴槽での入浴介助で気をつけること

入浴介助において気をつけなければならないことを、入浴の前・中・後に分けてご紹介しましょう。

・入浴前

すでにご紹介しましたが、介護を行う前には必ず準備と確認を怠らないようにしましょう。入浴する高齢者の方が食事をしているかどうか確認することも忘れずに。満腹時、また逆に空腹時の入浴は危険です。

続いて浴室の準備にとりかかります。お湯を浴槽に張ると同時に、浴室や脱衣場内を適切な温度に温めておきます。特に冬場の冷える時期は、小型の暖房器具を脱衣場に用意するといいでしょう。温度差の違う場所に移動することで、血圧が急上昇(または急下降)し発症する急性心筋梗塞を「ヒートショック」と呼びますが、まさに冬場の浴室と脱衣場が、このヒートショック多発エリアとなります。特に家庭においては、冬場のヒートショックに注意が必要です。

・入浴中

施設などでの介護浴槽を用いた入浴ではなく、自宅での介助入浴の場合は、足下が滑りやすくなっているので、注意しながらシャワーチェアに座ってもらいましょう。お湯を出す際、かける際はその都度声かけしながら行います。

体が温まったら、頭髪から洗っていきます。38度から40度程度のお湯を使い、あまり力を入れすぎず、指の腹を使って洗うのがコツです。シャンプーが残らないように、しっかりとすすいでください。高齢者の場合、温度感覚が鈍っている場合があるため、熱さを感じていないのに火傷してしまうことがあります。特に寝たきりに近い生活をしている高齢者の方の場合は注意が必要です。

体を洗う際は、スポンジなどを使用してソフトに行います。高齢の方の皮膚は弱っているため、あまり強くこすってしまうと傷ついてしまうことがあります。汗をかきやすい場所や、排泄物で不潔になりやすい陰部は、特に気をつけて洗うよう心がけましょう。

・入浴後

入浴後は、タオルを使って、体や頭に残る水分を取り除きます。滑りやすいので、足の裏は特にしっかり拭いておきましょう。お風呂の後は血圧が不安定になりやすいので、なるべく椅子などに座らせ、安定した姿勢で着替えてもらいます。安全のため、水分補給も忘れずに。最後に体温や血圧などをチェックしましょう。

介護浴槽について

ここまで、入浴介助において注意すべき点や、そのやり方についてご紹介してきましたが、ここからは介護浴槽についてご紹介します。介護浴槽は、その名のとおり、介護に適した浴槽ですが、通常は病院や高齢者介護施設などに設置されます。個々の高齢者の症状に合わせて選ぶことで、介護をする側、そしてされる側のストレスを軽減することができます。

・それぞれの要介護者に合った介護浴槽を選ぶ

介護浴槽には、いくつかの種類がありますが、大切なのは「誰が使用するのか」を想定して選ぶことです。想定される利用者に合ったタイプの介護浴槽を選びましょう。

「仰臥位入浴」は、仰向けの状態で入浴するタイプの介護浴槽です。ストレッチャーに利用者を乗せた状態から、ずらすだけで入浴ができるものもあります。このタイプの介護浴槽なら、寝たきりの方でも比較的かんたんに入浴することができます。

「座位入浴」は、専用車椅子に乗ったそのままの姿勢で入浴することができる介護浴槽です。寝たきりの方には向きませんが、車椅子に座れる方であれば、とても楽に入浴することができるように作られています。入浴する方にとって、通常のお風呂に浸かるような自然な姿勢と視野の広さもメリットだと言えます。

「ADL入浴」は、自宅生活への復帰を目指す方や、現在、すでに自宅で暮らしていて、さらに自由に動き回れるよう努力する方に向く介護浴槽です。自宅の浴槽に近い作りをしていますが、安定感のある背もたれや、ホールドしやすい浴槽の縁など、高齢者の方の使い勝手がよく考えられています。

この記事では入浴介助、そして介護浴槽について、かんたんにご説明しました。これからますます高齢化していく日本社会では、介護、そして社会が果たすべき役割も同様に増えていきます。我々一人ひとりも社会の一員として、社会の在り方を考えるべきではないでしょうか?